コラム
"違い"のプリズム
コラム
"違い"のプリズム
働き方に迷いのある方に向けて、
ドラッカーをはじめとする、
先人たちの知恵をご紹介させていただきます。
内容として、
あなたの人との”違い”を引き出し、「働き方」や「生き方」に活かすカギとなる、以下のポイントをお伝えします。
なぜ、働き方の"違い"を知ることが重要か?
どうすれば分かるのか?
思いのほか難しいのは、なぜか?
なぜ、今なのか?
彼らの言葉が、あなたの次の一歩を導くヒントになるかもしれません。
まずは、働き方の”違い”を知ることが重要、というところから。
ドラッカー「右利きか左利きか」
ピーター・ドラッカーは、言わずと知れた、20世紀最大の経営思想家。マネジメントの発明した、と言われる方です。
60年以上にわたって数多くの経営者と働いてきたドラッカーは、企業の経営だけでなく、個人が「自らをいかにマネジメントするか」に関しても、押さえるべき原則を示してくれています。
その中で、
ドラッカーが、強み以上に重要ではないかと指摘するのが、「自分にあった働き方」を知ることです。
以下、引用です。
「Amazingly few people know how they get things done. Indeed, most of us do not even know that different people work and perform differently. Too many people work in ways that are not their ways, and that almost guarantees nonperformance. For knowledge workers, How do I perform? May be an even more important question than What are my strength?」
訳すと、
「驚くべきことに、自分がどのように事を成すのか知っている人は、ほとんどいない。実際、多くの人は、人が違えば、働き方や成果のあげ方が違うことさえ知らない。
あまりにも多くの人が、自分に合わないやり方で働いて、当然、成果はほぼ確実にあがらない。
知識労働者にとって、”私はどのように成果をあげるのか?”という問いは、”私の強みは何か?”という問いより、重要かも知れない」
具体的には、例えば、
読み手か、聞き手か、
人と組むか、一人でやるか、
緊張や不安があった方がよいか、安定した環境の方が良いか
・・・
などなど、
効果的な仕事の仕方は、人によってさまざまです。
違いを知らず、無自覚なままだと、周囲から求められるまま、自分に合わないやり方でやってしまいます。
それでは、当然成果はあげられない。
しかも、
それは、右利きか左利きかのように違うと、ドラッカーは例えます。
一人ひとりに固有のもの、気質や個性にもとづくものとして、変更することができない。少なくとも容易にはできない。それだけに、「与件」として理解することが重要だと。
想像できますでしょうか? 利き手を使わずに、仕事をする姿を。
では、自分にあった働き方は、どうすれば分かるのか?
ドラッカー「最初の仕事はくじ引き」
結論、まずは、やってみるしかありません。
ドラッカーは、最初の仕事はくじ引きと言いました。実際に働いてみないと、どんな働き方が自分に効果的なのか、分からないからです。
一方で、
既に5年や10年働いた経験があれば、どんな場合に仕事がはかどり、どんな場合はそうでないか、既に分かっていることが多いのではないでしょうか?
それを整理して、実践すればいい...
とはいえ、それだけでは解決できない場合も、多々あります。
なぜでしょう?
スティーブン・コヴィー「脚本づけ」
それは、周囲であたり前とされるやり方と、自然と好むやり方との「区別」がつきにくいことがあるからです。
『7つの習慣』の著者スティーブン・コヴィーは、そのような思い込みについて、”脚本づけ”されていると表現しました。
以下、引用です。
「ほとんどの人は、自分の周りの人たちの意見やものの見方、パラダイムに脚本づけされている。そのような社会通念の鏡に映った自分の姿が本当の自分だと思っている」
知らぬ間に、周囲のあたり前を、自分でもそうだと思い込んでしまっていることがあります。
仕事の仕方でも同様です。
例えばリーダーは、力強く皆を引っ張るもの、というようなステレオタイプに脚本づけられていると、それを無理に演じるかも知れません。
また、
利き手の例えで言うと、かつて左利きは、まともに扱われず、単に無能とされた時代がありました。
右利きがあたり前とされ、自分でも、左利きはおかしいと思い込んでいたらどうでしょう? 自然なふるまいや持ち味を、自ら封印してしまい兼ねません。
ですので、
これまで脚本づけられ、後天的に身に着けてきたものと、気質や個性にもとづく自然な衝動を、「区別」して理解することが、カギとなってきます。
そのような、自らの衝動に従う大切さを伝えてくれるメッセージがあります。
スティーブ・ジョブズ「Follow your heart and intuition」
有名なジョブズのスタンフォード大学でのスピーチ。すでにお聞きになった方が多いのではないでしょうか?
「自分の人生を生きる」エッセンスが、約15分の3つのストーリーに詰められています。まだの方には、オススメです。
その中で、ジョブズは、
Follow your heart and intuition.
と言いました。
以下、引用です。
「Don’t let the noise of others' opinions drown out your own inner voice. And most important, have the courage to follow your heart and intuition. They somehow already know what you truly want to become. Everything else is secondary.」
私なりに訳すと、
「あなたの内なる声を、他人の雑音にかき消されるな。そして最も重要なのは、あなたの心と直感に従う勇気をもつことだ。それらはなぜか、あなたが本当になりたいものが何かを知っている。他は、すべて二の次だ」
内なる声や、あなたの心で感じること。それらは、一人ひとりに固有のもので、社会通念の脚本づけの対極にあるものです。
それらは、頭の理解だけでは分かりません。実感や違和感を通して、気づいていくものです。
人によっては、感覚が鈍くなっている場合もあると思います。それでも体系的に取り組むことで、自然な衝動に気づいて、認識を深めていくことができます。
そのような、
誰に言われる訳でもなく、自然と好むことや、好むやり方、そして、その強みを知ることは、いわば自らを導く「コンパス」となるのです。
では、そのような知識が、なぜ今、重要なのか?
ドラッカー「自らをマネジメントする」
100年時代となり、個人の労働寿命が会社の平均寿命を超える中、一人ひとりが自らをマネジメントすることが求められています。
これまでマネジメントされる存在だった個人が、自らをマネジメントする立場へ。
ドラッカーは、この事態を、求められることが180度変わる、革命的な変化だと言いました。
以下、引用です。
「自らをマネジメントするということは、一つの革命である。一人ひとりの人間、とくに知識労働者に対し、前例のないまったく新しいことを要求する。あたかも組織のトップであるかのように考え、行動することを要求する」
歴史上かつて無かったことが起きています。
当然、準備は足りていません。働き方がズレたり、よく分からなくなるのも、もっともです。
従来からの標準化や画一化のパラダイムで育ってきた中で、180度違った古い考え方のまま、進み続けてしまい兼ねません。
ですから、
人生航路の舵を自分で切るために、「自分」の活かし方、マネジメントの仕方という新たな知識が、一人ひとりに重要なテーマとなっているのです。
おまけ「穴の第一法則」
穴の第一法則というものがあります。
「あなたが穴の中にいることに気づいたら、掘るのをやめよ」
というものです。
穴の中でそれ以上掘ったら、どんどん深みにはまって行ってしまいますね。
もし、
自分にあった働き方ができていない。何かがズレている。だけど、どこがズレているかは分からない...
と感じることがあれば、もしかして、穴に落ちているのかも知れません。
そのような場合は、一度掘るのをやめて、立ち止まってみてはいかがでしょう?
出典(抜粋編集):©『Managing Oneself』(P. F. Drucker著, 2008, Harvard Business School Publishing Corporation)、『明日を支配するもの』(P. F. Drucker著, 上田惇生訳, 1999, ダイヤモンド社)、『経営者の条件』(P. F. ドラッカー著, 上田惇生訳, 2006, ダイヤモンド社)、『7つの習慣』(スティーブン・R・コヴィー著, ジェームス・J・スキナー 川西茂訳, 1996, キングベアー出版)、Steve Jobs‘ 2005 Stanford Commencement Addressより引用
以下、個人的に印象に残ったエピソードです。
ご関心ない方は、スキップしてください。
空の色
大学時代に読んだ、北野武(ビートたけし)さんのエピソードが印象に残っています。
最初の人生の節目。
当時大学生だった彼は、学校にはあまり行かずにふらふらしていたけれど、卒論を書けば何とか卒業はできそう。
けれども、それをやって卒業し、就職するのか?
迷いながら新宿の街を歩いている時に、ついに、兄や母たちが何とか学費を工面してくれていた大学を辞める決心を。
そのとき空を見たら、本当に空の色が変わったんだと。
いやあ、何というか、人生の決断。
そのときの情景がありありと伝わって来て、胸に響きました。
私はというと、中途半端に大学に残って何となく卒業してしまい。当時はそれが嫌で嫌で…
皆が就職するから就職、というのはやめようと、当時一番やりたかった無期限の旅に出ることに。
ようやく人生が始まった、と感じました。
H.K.
ハチとカモメ
同じく大学時代に読んだ、北野武(ビートたけし)さんが事故で死にかけた時のエピソード。
古い友人に「お前みたいにバンバンやっていくから、こういうことになるんだ」と諭されたけれども、生き方を変えるのは無理な話。
そのたとえが印象的で、
生き方の違いというのは、飛ぶときの羽ばたき方の違いなんだと。
スズメバチは1秒間に何十回も羽を動かすけど、カモメはあまり羽ばたかずに、ゆったり気流に乗る。
もし働きバチが、カモメのような飛び方をしたら、落っこちてしまう。
それぞれのやり方があって、そのようにしか生きて行けない。
なるほど、と妙に心に残りました。
種類が違ったら、飛び方は違う。生き方も人それぞれ。
自分はどんな飛び方なのか?
働き始め、転職もして、少しずつ自分の飛び方が分かって来たと思っていた中、なぜか全力が逆効果にもなる時期が。
知らぬ間に自分の飛び方を見失い、うまくコントロールできない状態に。
そして、飛び方のズレに、ようやく気づけたときの衝撃…
ストンと腹に落ち、人生の舵を取り直すきっかけとなりました。
H.K.
出典(抜粋編集):『たけしの死ぬための生き方』(ビートたけし著, 1997, 株式会社新潮社)